問1「ノロノロ」と「ノーロノーロ」の違い

風土
問1「ノロノロ」と「ノーロノーロ」の違い
答1
平成21年2月14日。私は日本サッカー協会国際委員を務められている藤田一郎氏とお会いした。今越フットボールクラブ(今治市の少年サッカークラブ)の矢野敏宣先生も同席で、来島海峡が一望できる今治市の某所に集った。鯖やヒラマサの刺身などを酒の肴に、日本のスポーツについて語らいながら楽しい時間を過させて頂いた。藤田氏は腰部脊柱管狭窄症を脊椎内視鏡手術にて克服させ、術後数週間にて復職されたところだった。藤田氏は日本サッカー協会の創立に尽力されたお一人で、1969年にヨーロッパサッカーの見学に行かれた時のことを、「球技場に落ちていたものですら、日本サッカーの為になった・・」と熱心に私に話して下さった。ヨーロッパと日本のスポーツを比べた時にまず問題になるのが「スピード」だと言われる。このスピードとは単に競技中のスピードだけに留まらず、情報量や周囲の環境をも含む、と藤田氏は言われる。
愛媛県今治市は人口約18万人。のんびりとした所で、瀬戸内の多島美や潮風に象徴される牧歌的な町である。その一方、行き交うタンカーは一日1000隻を超え、昔から瀬戸内の海路のほぼ中央として栄え、造船業やタオル業は日本でも上位の生産高を誇っている。私が普段住んでいるのは松山市近郊である。愛媛県の県庁所在地である松山市と今治市では、風土も歴史も、文化も人口も随分と異なる。
松山・今治市両市で中学・高校スポーツの指導の場に立ち会うことがある。練習中に気分が乗らず、「ノロノロ」している生徒がいる。「ノロノロ・・」しているのだ。松山市では「ノロノロ」している・・という感覚である。ところが、これは私の生まれ故郷の今治市に行くと「ノーロ、ノーロ」という感覚に変わる。「ノロノロ」と「ノーロ、ノーロ」は同じでしょう?とおっしゃるかもしれないが微妙に違う。
今治市の風土が規定している人の性格がある。一言で言えば「イノセント:Innocect」(無邪気・無罪)。「素朴」で「欲がない」とも言える。今治市は情報量も少ない。IT上の情報量は豊富にあるが、生(Live)の情報量が極めて少ない。
有名人など会うこともなく、文化講演、音楽リサイタル、舞台、芸術・・あらゆるものの本物に欠けている。なかなかお目にかかれない。Liveがないのだ。
スポーツに当てはめると、まずプロの球団がない。プロ野球やプロサッカーの巡
回試合もない。競輪・競馬・競艇などの賭け事場もない。プロのアスリートの動きを見たことがない。テレビで見るのとLiveは全く違う。
回試合もない。競輪・競馬・競艇などの賭け事場もない。プロのアスリートの動きを見たことがない。テレビで見るのとLiveは全く違う。事実私がそうであった。大好きだった巨人軍の王貞治選手を生で見たのは、小学4年生の時の広島市民球場での試合であった。小学生の小さな手は野球場の金網を容易にくぐり抜けることができ、試合前にネット越しで張本勲選手が握手をしてくれたことも強力に覚えている。
松山までやってくるとこれらの問題が少しは解消される。少しだけ都会だ。プロ野球の試合も年間3回位は開催される。・・・であるから松山の「ノロノロ」に「Innocect」が加味されると、今治で感じる「ノーロ、ノーロ」になるような気がする。全てがイノセントなのだ!これがまた今治市の島嶼部に行くと更に「Super innocect」になる。決して私はこれを馬鹿にしているのではない。瀬戸内が好きな私はこの「Innocect」という感覚が大好きだ。しかしスポーツの現場においてはやや不利になる。「Innocect」ではスピード感が無いために勝てない。
今は今治市と松山市を比較したが、松山市と東京を比較したらどうなるであろうか?はたまた東京と歴史都市ローマや、東京と人種の坩堝であるニューヨークを比べたらどうであろうか?
好きなスポーツを思い浮かべて頂き、自分の生まれ故郷ではその種目が盛んかどうか、と少し考えてもらいたい。今治市は例えば造船業は非常に盛んで、日本のそれを牽引している。例えば書道は非常に盛んで東京にも負けないような偉人を多数輩出している。
ある事柄が盛んな場合、それが好きな方もその町には多いものだ。環境は極めて大切である。その環境の充実が強い選手を生むことがよくある。
そのスポーツ種目について、もし自分の町ではあまり盛んでないと思うなら、上手い選手のプレイを生で見に行くべきだ。年に一度でもいい。見ただけでも違う。「ぬ!こりゃいかん!」という感覚をぜひ感じてほしい。もしそのような機会が無いのなら、小学生なら近くの中学生大会に、中学生なら高校生の試合の見学に行けばよい。指導者もそのような機会を作って欲しい。
先日開催された平成21年の高校総体予選会で、野村高校女子バレーの試合を、観客席から応援している中学生の集団がいた。Tシャツに鍼巻き姿のその生徒達は、野村中学の女子バレー部のメンバーであった。
私が中学生の時、愛媛県の強化指定選手(陸上競技)に選ばれた。その時、中学生・高校生・大学生での強化合宿が年間2回あった。中学生で選出された選手は4,5人であったが、同じ中距離の練習でも高校生・大学生と一緒に走った時は「ぬ!こりゃいかん!」と思ったし、夜のミーチィングで高校の陸上部顧問の先生から頂いたアドバイスは、非常にためになり今でも覚えている。
合宿中の朝食時、当時の男子100メートルのエース北尾定則選手(日大)がたまたま私の前に向かい合わせで座られた。中学1年生の私は緊張してしまって、持っていた味噌汁をひっくり返してしまい、なんと北尾選手が私のジャージを拭いて下さったのだ。種目は違っていたけれどグラウンドで見た北尾選手のスピードには、ただただ呆然とした。
「百聞は一見に如かず」です。早速どこかに見に行きましょう!あなたにとって非日常のスピード感が、日常の常識である集団がきっとありますから。