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問17  膝の「前十字靭帯」が切れても諦めるな!(怪我3)

 kamogawa0-79.jpgkamogawa0-85.jpg 膝の「前十字靭帯」が切れても諦めるな!(怪我3)

 
 平成21年8月23日。トライアスロン中島大会(愛媛県)が行われた。毎年、猛暑の中行われる過酷なレースである。Swim 1.5km, Bike 40km, Run 10kmで行われた。
 今回、私の知人のAさん(女性)が見事完走された。完走だけでも十分素晴らしいのであるが、この女性、膝の靭帯手術を3回過去に受けている。膝関節前十字靭帯(ACL)損傷である。
 
 膝関節は非常に大きな可動域を持つ荷重関節である。この関節の最大の特徴は、靭帯支持性の関節であることです。股関節は骨性の連続が重要であるし、足関節は骨性と靭帯性の両方の連続が大切である。しかし膝関節はその解剖学的な特徴から靭帯によって安定化されている。
 その靭帯とは4つある。膝関節の内側にある内側側副靭帯。外側にある外側側副靭帯。そして膝のちょうど中心にある十字靭帯2個(前十字靭帯。後十字靭帯)である。これらの靭帯が1つでも切れると膝の安定感がなくなり、膝おれ(グラグラ感・不安感)が生じる。特に十字靭帯の場合は有効な保存的治療にも時間を要する為に、殆どが手術療法になることが多い。
 一般に、この前十字靭帯を損傷するとスポーツも断念しなくてはならないケースすらある。また手術を行っても早期から十分なリハビリが必要となり、また手術自身も難易度の高いものである。
 
 さてこのAさん。19歳時に右ACL再建術。21歳時に右ACL再再建術。29歳時に左ACL再建術。とACLの手術を3回も受けている。その間、半月板の手術などを含めると合計7回の膝の手術を受けている。
 私も整形外科医になって16年目で、約3000例の手術を施行してきた。いろいろな再手術も数多く見てきたが、彼女のようなACL3回行った例は初めてである。過去に記憶がない。
 Aさんは見事にこのトライアスロンを完走した。私のジムのみんなも大喜びで彼女を祝福した。
 
 普段Aさんは私と一緒に、週に1度ジムでトレーニングを行っている。殆ど全てのメニューをこなす。中には特別膝に負担の掛かるスクワットまで盛り込まれているが、いつもこのパワートレーニングまでこなしてしまう。明らかに私の医学的常識は覆されてしまった。ACLの再建を両膝で行っている選手の場合、やはり膝の装具をつけたりして、運動量も抑えるように指示したくなるのが医師の人情だ。現在でも右膝に関しては不安感・痛みがあるそうである。しかし、そのような辛い顔は何一つ見せない。膝が痛い前に、スポーツが本当に好きなのだ。
 
 貴方がACL損傷で苦しんでいるならば、決して諦めないで欲しい。手術後早期復帰は無理であるが、リハビリを十分に行えばもとの競技に十分復帰できる。現在では手術の成績も格段に向上している。
 一方健康な方で、貴方が膝の痛みを全く感じていないなら、是非膝を大切にして欲しい。怪我をしないと膝を痛めた不自由さはわからないものだ。特に膝が内に入り、足先が外を向いているX脚(Knee-in, toe-out)の人(特に女性)は、ACL損傷のリスクが高い。自分で鏡を見て実際どのような形を自分がしているのが一度確認しておいて欲しい。
 
 膝は本当に大切にして欲しい。腰の次にスポーツのパフォーマンスが落ちる重要な関節でありますから。

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